2012年5月19日土曜日

人間 | ニューヨーク・タイムズ選集


【ペンシルバニア州ブロスバーグ】6歳になるカーリンド・ダンバーさんは、ほとんど夕食に手をつけなかった。だが、この年頃によくある理由からではない。パスタがへんてこな形になっているのではなかった。人形たちとのデートにせっつかれているわけでもなかった。

 問題はカーリンドさんが見つけた手紙にあった。それは通知票にはさまれていて、BMI指数が百分率で80となっていた。この一年生には「指数」も「百分率」も理解できなかったし、百分率で5から85の子供たちは正常と見なされることも知らなかった。一方、85を超える子供は肥満の危険があるか、すでに肥満であることも知らなかった。

 にもかかわらず、彼女は担任が食べ過ぎを戒めていることを確信していた。

 その手紙が届いて以 来、「私の2歳の子のほうが娘よりも食べるようになったの」と、母親のジョージアナさんは言う。ジョージアナさんは学校に不満を述べ、困惑している娘を助けようとしている。「あの娘はやっかいなできごとに巻き込まれるのではないかと思っているんです」とジョージアナさんは言う。

 児童たちのBMI指数を保護者に報告する慣習は、ある子供が肥満と闘っていた数年前に遡る。そのとき、その子はカフェテリアから差し出される新鮮で低脂肪の食事と体操を続けていた。現在、いくつかの財政的に恵まれた計画によって得ためざましい結果の刺激を受け、デラウェア、サウス・カロライナ、テネシーを含む各州はBMI指数を存分に活用している。その報告書は、気取らない口調で肥満傾向を知らせるカードで、子供たち の新しい儀式になっている。

 ニューヨーク州を含む他州の議員たちも同様の方針を掲げており、学区単位で導入したところもある。

 地方にある南タイオガ学区では、各校が州の命じた報告書を配っている。一方で、朝食には相変わらずファンネル・ケーキやピザが出てくる地域だ。子供たちの中には一年の半分しか体操を受けない子もいる。03年度は34%が肥満か肥満の危険性があると指摘された。


信仰に基づく肥満のプログラム

 子供たちにBMI指数を知らせる健康問題の専門家たちがこの矛盾した状況をいくら心配しても、摂食障害や社会的不名誉になると警告しても、専門家たちが言う数字は曲解されて混乱を増すだけだ。高い数値には一種のやるせなさも漂う。
 
 「皮肉なことにBMI指数の調査を通じて肥満気味の子供を見つけ出しても、ひどい食事やスナック漬けといった状況が変わるわけではない。学校での体育も限られている」と、ボストン小児病院のデービッド・ラドビグ博士は言う。

 北中央ペンシルバニアの農家と工場労働者は、体重に関して医療専門家たちとは異なった見解を持っている。当地のピザ・チェーンはプジーと呼ばれている。マンスフィールドで最もしゃれたレストランでは、山盛りのフライドポテトが乗ったグリルチキンサラダが出てくる。

 この地域の中学2年生の60%は、03年度に85を超える数値が出た。4分の1が95超で、これは見るからに太っていることを示す。

 大人と同様、子供たちのBMI指数は体重に対する慎重の割合で算� ��する。だが、子供たちは年齢と性別によっても区切られ、「肥満」という言葉は使われない。

 北ペンシルバニア高校のミスに選ばれたホリー・ベルグソンさんは、20号の服を着ている。このコミュニティでは、体重に関してはおおらかであることを示す証拠だ。テレビの「ベイウォッチ」に出てくるスタイルには目もくれない。

 「自分の大きさなんて気にしないわ」と17歳のホリーさんは言う。ホリーさんはインスリン抵抗性があり、タイプ2の肥満の上を行く状態にある。「見た目じゃなくて、中身だもの」

 報告書が正当性を訴える根拠の一部は、学校が昔から測ってきた身長・体重検査の延長にあることだ。

 だがここでは、家庭へ送られる手紙は衝撃的な目に遭う。多くの親たちはそれを捨ててしま� ��。子供たちの体重について指図されることに怒り、地域基準では何の問題もない子たちが公には太りすぎだと言われることに我慢ならない。中学1年生たちは昼食時に数値を知らされた。そして少なからぬ子供が、カーリンドさんのように、もう食べ物を口にしたくなくなったと生徒や親たちは話す。


バック窒息犠牲者が吹く

 今年、ペンシルバニア州が決めたことはBMI指数を幼稚園から中学2年までに通知することだ。ホリーさんは来秋、高校に適用される前に卒業する。ホリーさんは自分の体に自信を持っている。ライフガードで、堂々と水着を着る。このことが物語っていることは、子供たちにとって肥満を意味するものが、幼少期から変わってしまったということだ。

 子供たちの間では、太っちょをからかうことは日常光景だった。だが現在、マンスフィールド小学校のドリス・サージェント校長が言うには、あまりに太った児童がいるあまり、「からかいの種にはならなくなっている」。体重では2通りのからかわれ方がある。太っていることとやせていることだ。

  単に大柄な子供たちは「やせている子供をからかう。というのも自分自信の体重が好きになれないからです」。そう言うのは、マンスフィールド中学校3年のキャシー・アレンさん。アレンさんはやせていて、拒食症とからかわれることがある。

 マンスフィールド中学校から数マイル離れたところにある北ペンシルバニア中・高校では、目の霞んだ女子生徒たちが授業前に集まり、学校からの報告書が自分たちにはどうしようもできないことで責めていると不平を言っていた。

 「食べる以外のことが何かあれば違うのだろうけれど」と、生徒の一人ショーナ・ゲローさんは言う。

 最近ニューヨークへ修学旅行で出かけたら、自分たちがどこか別のぽっちゃりとした惑星からやってきたように感じられたそうだ。

  「ほかのみんなはこれくらいの大きさで」とキャシー・チェースさんは両手を狭めて言い「私たちはこんなものね」と両手を一気に広げた。

 BMI指数を知ると多くの人が似たようなことを感じるが、かといってどうしていいのか不安な気持ちにさせられる。

 この学区の給食業務を担当しているカレン・シックさんは、コストがはねあがっても、生徒たちが全粒小麦より白パンの方が好きでも、より健康な食事を少しずつ入れている。学区ではメニューを刷新し、ゲータレードとファンネル・ケーキの粉砂糖をやめた。だが、それでも栄養学的に混在した内容になっている。誕生日のカップケーキは戒められる一方で、カフェテリアではアイスクリーム・サンドウィッチやライス・クリスピーを売っていて、一度に5個買う� �徒もいる。


うつ病のSSD

 当地のカフェテリアでは最近、キーウィフルーツと地場産の生野菜を導入。大きな支持を受けた。だが、コストがかかるため、いまは缶のフルーツとアイスバーグ・レタスに戻っている。役所では関心を引き起こそうと熱心になる一方、全体の変化にはまだまだ時間がかかると認めている。

 同じ方針で、全生徒が毎年何らかの体操をしている。だが学校から45分かかるところに住んでいる生徒もいる。その生徒たちが家に着くころには戸外が暗くなり、外で遊べないこともある。そして行政側が指摘するのは、体重に問題のある子供たちの多くは放課後も指導を受ける必要があり、特別指導かチームスポーツに加わらなければならないということだ。

 ペンシルバ� �ア州の教育委員会は、アーカンソー州のような資源は持っていないと言う。アーカンソーでは州のたばこ訴訟から引き出した資金を使って、子供たちの肥満増加率を遅らせることができた。

 また、マイアミ・デード郡の公立学校のようにカヤックを導入するといった風変わりなスポーツを導入する予算もない。そこでは、BMI指数95以上の高校生が、一学期で平均8ポンド(3.6キロ)体重を減らすことができた。

 生徒たちの食生活をうまく変えるためには、学校は生徒に個別に面談し、「本当に栄養バランスのとれた食事と運動」を提供しなければならないと、エール大学のマーレンス・シュワルツ教授は言う。「どれくらい果物と野菜を摂取しているか。炭酸飲料をどれほど飲んでいるか、です」

 クリスチ ーナ・ボヴェさんはブロスバーグ小学校へ通う3人の子供たちの母親だ。ボヴェさんは9歳になる息子クリスチャンさんの水着姿の写真をつかみ、息子が「太りすぎの危険」ではないことを証明しようとした。クリスチャンさんのBMI指数は92だ。

 学校の通達は不正確だし、無意味です。そうボヴェさんは言う。「学校は結果を通達してくるだけで、それをどう使えばいいとか、何を意味するかとかはまったく教えてくれないんだもの」

 ボヴェさんは8歳になる娘アローラさんの方が心配だ。アローラさんは最近、にんじんスティックばかり食べるようになり、体重を気にするようになった。「あの娘はお風呂から出てきて言うんです。『私は68ポンド(31キロ)。だれもそう思わないでしょう』」


 バターを使用しないポップコーンの一粒まで気にするような小さな子供には、BMI指数を知らせることは危険にもなると一部の専門家は言う。

 「学校からの通達は評価できます」とハワイ大学で摂食障害を研究する心理学者ケリー・ヴィトウセクさんは言う。健康な体重について公表しても「子供がどのようにそうなったかの背景を知らなければ、体重を抑えるために何らかの活動をしたと言い張ることになります」

 学校でBMI指数を通達する慣習は、心身両方の面において「手応えのない調査」であるにもかかわらず、肥満度を測ろうとする実験計画から来ている、とエール大学のシュワルツさんは言う。「どの州も試したことがない政策を採用しているのです」

� ��マイアミやニューヨーク市のある学区では、生徒別に必要なフィットネスを割り出している。BMI指数とともに、腹筋運動を何回やればいいかとかジョギングを何マイルすればいいかとかを教える。

 連邦疾病対策予防センターにすぐにも期待されていることは、BMI指数を割り出すことに何らかの見解を発表することだ。利点と欠点について指針を明らかにすることである、とされる。その一方、BMI指数の支持者は両親にショックを与えたり不快な思いをさせたりするという問題が重要だと話す。

 「もし家族が肥満の問題について正確な知識を持っていれば、BMI指数をつきつける必要はないだろう」とボストン小児病院のラドビグ博士は言う。「実際には、何が正常で健康的かを知らないゆがんだ子供たちが大 勢いるのです」

 BMI指数は完全ではないが、効果的でコストのかからないツールだとラドビグ博士は言う。博士は05年の学会誌で、今の子供たちは親の世代よりも寿命が短いだろうと発表した。

 「子供たちの肥満の行く末はあまりに重大で無視できないのです」。そう博士は言う。(ジョディ・カントー)



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